誰もが知っているだろうゲーム
ゲームを遊んでいるのなら知らない人はいないだろう、ドラゴンクエスト。
特に日本人なら、シリーズのどれかは一度は手に取った方も多いはず。
影響を受けたフォロワーは数知れず、日本でファンタジーといえばこのゲームを根にしているところさえあります。
そんなドラゴンクエストですが、今回レビューするのはその第1作目、そう、ワンなのです。
といっても今回ベースにするのはスーパーファミコンのドラゴンクエストⅠ・Ⅱ。
その一つを取り上げます。
そして語るテーマは”脳に心地よいゲーム”。
さて、この2つがどう結びつくのでしょうか?
- シンプルイズベスト
- 穴の中の男型と勇者の旅
- プレイする効能
この記事は3分で読めますので、よろしければ最後までご覧ください。
シンプルイズベスト
ドラゴンクエストは RPG の中でも、シンプルな部類に入ります。
というのも、ファミコンの容量である ROM カセットは512キロビット(64キロバイト)しか入らないという制限があったからです。
ギガやテラの現代からすれば隔世の感があります。
それでも、同じファミコンソフトのファイナルファンタジー1はあれだけ盛り込んでいるのですから、出た時期が時期とはいえシンプルにも程があります。
これは、ドラクエ(ドラゴンクエストの略)の生みの親である堀井雄二が、当時の日本のゲーム市場には、『ローグ』『ウルティマ』『ウィザードリィ』『ザ・ブラックオニキス』『無限の心臓』など、難解で複雑な RPG が多く、敷居が高いと感じていたということだからだそうです。
そうです、 RPG はマニアックな趣味のジャンルだったのです。
そこで堀井は、誰でも気軽に楽しめるように、シンプルで分かりやすい RPG を作ろうと考えました。
- 把握しやすいターン制コマンドバトルシステム
- 悩むことのない成長システム
考えられたシステム
ドラクエの戦闘システムは、ターン制コマンドバトルという形式を採用しました。
これは、当時のファミコンの性能やメモリの制限のために、アクションゲームのようなリアルタイムの戦闘は難しかったからです。
しかし、堀井はこの制約を逆手にとって、①プレイヤーが戦闘の流れを把握しやすく戦略を立てやすい、②敵の行動パターンや弱点を覚えることで、戦闘に緊張感と達成感を持たせることに成功しました。
RPGの特徴であるキャラクターの成長システムもシンプルにしました。
レベルアップすると、自動的にステータスが上昇し、レベルによっては新しい呪文を覚えます。
これは、プレイヤーがキャラクターの育成に悩むことなく、冒険に集中できるからです。
このように、シンプルにすることによって、万人が遊びやすい RPG を作り出したのです。
穴の中の男型と勇者の旅
物語論という学問分野があります。
物語や語りの技術と構造について研究する分野で、文学や映画などのさまざまなジャンルの作品を分析するのに役立ちます。
物語をパターンとして分析する手法もあります。
パターンを知ることで、ドラクエが他のストーリーを持ったゲームとの違いを浮き彫りにでき、どれだけ際立っているのかを比較できるのです。
ドラクエ1は「穴の中の男型」に近いと思います。
このパターンは、主人公が下降した後に上昇し、苦境を脱して成長するというものです。
主人公の旅は孤独で危険なものです。
主人公は仲間を得ることはありません。
彼は様々な敵や罠に遭遇し、死にかけることもあります。
また、竜王の城にたどり着くためには、困難の末に3つの神秘なるものを手に入れなければなりません。
これらは、主人公の下降を象徴すると言えるでしょう。
けれども、主人公は決してあきらめません。
彼は勇気と知恵と力を振り絞って竜王との最終決戦に臨み、倒して世界に平和をもたらすのです。
これは、主人公の上昇と成長を示すと言えます。
- 苦難からの成功という「穴の中の男型」
- 王道の「勇者の旅」
ストーリーの効果
このパターンは、主人公の下降と上昇という対照的な動きによって、感情的な効果を生み出します。
主人公の苦難に同情したり、主人公の成功に喜んだりすることで、プレイヤーはストーリーにグッと引き込まれます。
違うストーリーでいうと、『オデュッセイア』や『ハリーポッター』シリーズも、困難や苦難からの劇的な成功を描き出して我々に感動を与えています。
他にも「貧民から富豪型」「富豪から貧民型」「イカロス型」「オイディプス型」「シンデレラ型」などがありますが、オーソドックスな RPG に適しているのはこの型だと思います。
それと、もう一つ構造が組み込まれています。
「勇者の旅」という古典的なものです。
主人公は、伝説の勇者ロトの血を引く者として、王から世界に平和を取り戻すための使命を受けます。
その伝説の勇者の血を引くものが、強大な竜王という敵と戦うために、英雄的な冒険を繰り広げる。
この2つが合わさることにより、成長や変化を如実に体験することになります。
弱さにも気づき、克服するために努力することになります。
そして苦境を脱することで、自分の強さや価値を知り、自信や幸福を得るのです。
以上を限られた容量で、効果的にシンプルに成し遂げたのがドラクエ1なのです。
プレイする効能
シンプルな遊びやすいシステム。
RPGに合った、シンプルで効果的なストーリー。
では、これらより導き出されることとは何でしょう?
それは没入感です。
敷居が低いので、容易にその世界に入り込むことができるのです。
このようなゲームをすることは、以下のような効能をもたらします。
- ストレスの軽減
- 認識能力の向上
- 社会性の向上
- 脳に心地よいゲーム
ストレスの軽減
シンプルなシステムとストーリーのゲームは、プレイヤーに楽しさや達成感を与えることで、ストレスを軽減する効果があります。
ストレスは、身体や精神の健康に悪影響を及ぼすことが知られています。
したがって、ストレスを解消することは、知的な活動のパフォーマンスを高めることにつながります。
認識能力の向上
シンプルなシステムとストーリーのゲームは、プレイヤーに思考や判断力、記憶などの認知能力を鍛える機会を提供します。
一時期はやった脳トレゲームは単純で効果的なアタマの使い方をさせることで脳の活性化を図ったのでした。
複雑すぎないシンプルさこそがこういった能力を伸ばす絶好の装置となるのです。
社会性の向上
シンプルなシステムとストーリーのゲームは、プレイヤーに他の人とのコミュニケーションや協力、競争などの社会的なスキルを磨く機会を提供します。
守るべきルールや理想を遵守することで、コミュニケーションや協力につながる力をつけられます。
負けを認めたり、勝ったときの謙遜など、いくつかの行動パターンを知ることで競争力を身に着けられます。
シンプルゆえに、ストレートにアタマに響くのです。
脳に心地よいゲーム
そうです、ドラクエ1は”脳に効く”、『脳に心地よい』ゲームだったのです。
過去の栄光、もうやる必要のないレトロゲームではないわけです。
レトロゲームというだけでも、懐かしさや特別感を感じることで、心が満たされるという魅力があります。
それにドラクエという親しみやすいブランド、例えば絵(グラフィック)であったり音楽であったりすることにより心地よさがより増しています。
それもこれも、シンプルなシステムと”効果的な”シンプルなストーリーがコア(芯)にあるからなのです。
小難しいことを考えず、遊びやすいからプレイする。
それでいいと思います。
さいごに
今回取り上げたのはスーパーファミコンのドラクエ1ですが、プレイしようとしたいならば、選択肢は無数にあります。
ドラクエ1は、過去のゲーム機にとどまらず、ケータイや現在の据え置き機でも遊ぶことができるのです。
遊びたいプラットフォームで、遊びたいように遊べば、記事にした『脳に心地よい』は得られる。
何かアタマに心地よさが欲しい時、それがドラクエ1のやりどきです。
ライター紹介
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本とゲームが大好きです!
ゲームはアナログ、TRPG、ボードゲームも好物。デジタルは特にアドベンチャーとRPG。
他にもイラスト、音楽、映画、アニメ、マンガと、言ってしまえばカルチャーに浸かっているようなものです。どれもこれもがいいんです。
無類の珈琲党。