インティ・クリエイツ、性癖を隠せ
これはとあるボスの撃破シーンですが、キャラの頭上の文字を見てください。こんなのを嬉々としてやる企業が開発したゲームです。
※この記事は『蒼き雷霆 ガンヴォルト』および外伝『白き鋼鉄のX』シリーズのネタバレを多分に含みます。
今回は『蒼き雷霆 ガンヴォルト』シリーズの世界観がいかに過酷で、登場人物たちに厳しいのかを紹介していきます!
このゲームをプレイしたことがある、あるいはネタバレなんて気にしないスタンスのあなた!
いっしょに地獄を見ましょう!
『蒼き雷霆 ガンヴォルト』シリーズを手にとったことがなく、 SF 世界観でお辛い展開のゲームないかな~と思ったそこのあなた!
続編モノでの楽しみは主人公がどう変わったかだと思っているそこのあなた!
このゲームは横スクロールアクション初心者から熟練者まで多くの方におススメですので、まずはこのページを閉じて Steam で第一作目『蒼き雷霆 ガンヴォルト』を購入するか、下の基本情報に掲載された Youtube の公式 PV を見ましょう!
- 差別とテロの横行する近未来SF
- インティ・クリエイツは主人公を殺さずにいじめるのが大好き
- 別に差別をなんとかするお話ではない
この記事は5分程度で読み終わります。ぜひとも読んでいってください!
基本情報
『蒼き雷霆 ガンヴォルト』は2014年『インティ・クリエイツ』によって3DSダウンロード専用ソフトとして発売された横スクロール 2D アクションゲームです。
蒼き雷霆、と書いて『アームドブルー』と読みます。
かんたんな概要
蒼き雷霆 ガンヴォルトは、テロリストである主人公『ガンヴォルト(通称 GV )』が任務の抹殺対象となっていたバーチャルアイドル『モルフォ』の正体である少女『シアン』を救い出し、守るために戦うお話です。
本作は『ライトノベル 2D アクション』というジャンルになっています。
いわゆるライトノベル調の、厨二病然とした会話や雰囲気を押し出しており、スタイリッシュかつガンヴォルトの無敵っぷりがゲームにも落とし込まれたカッコいいアクションゲームとなっています!
そもそも世界観が終わってる
本作の舞台は、突然第七波動(セブンス)という特殊能力に目覚めた人間が現れた近未来です。
突然、火を吹いたり街を氷漬けにできる人間が現れた結果、世界は大混乱。
年月を経たことで多少は落ち着きを取り戻しましたが、文明社会でマイノリティになる能力者たちは能力を持たない人たちに差別され続けているのが現状です。
突然、人間社会に現れた危険な力を持つ生物。
しかも見た目は普通の人間と変わらないのですから能力を持たない人は能力者が恐ろしい。
「腕から銃を生やした者と、手を取り合えというのか?」というとあるキャラのセリフが、能力を持たない人たちにとっての能力者への考え方なのです。
終わってますね、この世界!
主人公だって差別主義!?
シリーズ第二作『蒼き雷霆 ガンヴォルト爪』で GV と対をなすダブル主人公の1人『アキュラ』は「能力者は害獣で、人間ではない」とまで豪語する差別主義者です。
彼の名誉のために言っておくと、この世界は能力者を差別することが当たり前の意見となっています。
そして彼は第七波動(セブンス)研究の第一人者だった父親が、その危険性を訴え続けた結果、殺されてしまったという背景があります。
一番おそろしいのは、そんなアキュラの意見は行き過ぎた過激思想ではあるもののマジョリティで、彼を明確に批判するのは差別されている能力者しかいないという点です。
終わってますね、この世界!
能力者も差別に走る!
少数派ゆえに虐げられる能力者たちもまた、能力を持たない人を差別するのがこの世界です!
実際に能力者と無能力者が戦うとなると、やっぱり能力者が勝ってしまうんです。
あまり強くない力でも、バットを持ってる人と素手の人が戦うようなものです。
そして彼らは特殊な力を持っている以外は人間と何も変わらない。
能力を持たない人と同じ心を持っています。
パティシエになりたい能力者の少年が、能力者の従業員がいてはお店ごと差別されてしまうからという理由で夢を断たれてしまう。
その力でなにか悪いことをしたわけでもないのに受け入れられない。
だから自分たちが受け入れられる世界にするべく、能力を持たない人を全て消してしまおうなんていう危険な思想に行きついてしまう能力者もいる……
終わってますね、この世界!
インティ・クリエイツの救済法も終わってる
『蒼き雷霆 ガンヴォルト』はキャラクター救済方法もとんでもないゲーム。
死を救済だと思っている人がシナリオを書いたとしか思えないお話です。
たとえば家族を人質に取られて参加したテロで、首謀者に仕立て上げられて終身刑を言い渡された少年。
人体実験の結果、薬物がなければ正気を保てなくなってしまった青年。
今はなき主の命令を守るために、数百年もの時を働き続け暴走した機械。
みんな殺して救済するのがこのゲームです。
その中でも主人公たちは、死なないがゆえに救われません。
バッドエンドに到達した時なんてわたしは「このまま死んでた方がこれ以上不幸にならなくて済むな……」とこのゲームをやる度に思います。
続編が出るたびに不幸になる主人公、ガンヴォルト
主人公 GV ことガンヴォルト。
この過酷溢れる世界に生きるシリーズ通しての主人公だけあって、彼の不幸度は作中でもトップクラスです。
最強の電撃能力、『蒼き雷霆(アームドブルー)』の能力者として知られる彼は、ある日出会った少女シアンを守るために戦い続けます。
そんな彼は、バッドエンドルートでは自らを助けてくれら恩師に裏切られ、シアンもろとも射殺されてしまいます。
しかし、それは序の口。
彼の本当の不幸はバッドエンドを回避した先の続編、『蒼き雷霆 ガンヴォルト爪』以降です。
トゥルーエンドの場合でもシアンは死んでしまいますが、その魂は彼に寄り添う幽霊のような姿となり、彼ともう一人のキャラ以外には見えない存在となります。
身体を持たないせいで食事や睡眠を必要としないシアン。
GV にとって、守れなかった少女が幽霊になって常に傍にいる状況は、彼の精神を蝕んでいく『呪い』と公言されているほどです。
シリーズ最新作『蒼き雷霆 ガンヴォルト鎖環(ギブス)』では、心の底から信頼できる相棒が現れます。
相棒や仲間たちとの生活は慌ただしくも、傷つくことしかなかった彼の人生の中でもっとも幸福な日々でした。
しかし、鎖環においてもバッドエンド、トゥルーエンド問わずに彼は相棒たちとの別れを余儀なくされます。
もはや、 GV が幸せになる方法はこれ以上続編が作られないこと以外にないんじゃないかと思ってしまいます。
因果応報とは口が裂けても言えない主人公、アキュラ
先ほどは事情はあれど差別主義者だと記したアキュラ。
彼は第二作目以降、『白き鋼鉄の X (イクス)』という外伝シリーズの主人公を務めます。
『白き鋼鉄の X 』における彼は『バタフライエフェクト』という何かを探して、本編とは真逆の無能力者が差別される世界を旅しています。
無能力者が差別される側だからなのか、それとも他の理由からか。
本作の彼は本編とは打って変わって、理不尽に徴兵される能力者側の事情にも一定の理解を示す性格となっています。
アキュラが本編とはまるで違う性格になった理由。
それは、バタフライエフェクトの部品として誘拐された能力者の妹を探して100年以上戦い続けたから。
そして、100年以上機械のパーツとして使われ続けている妹がマトモな姿で生きているなど到底考えられるわけもなく。
アキュラは妹を楽にしてあげるために、彼自身もまたサイボーグとなって100年戦っていたのです。
妹が憎むべき能力者であったことを知り、それでも妹のために100年を生きた彼はもはや、他者を差別するという排他的な考えを持てなくなったのです。
なお、『白き鋼鉄の X 』は、『蒼き雷霆 ガンヴォルト』のバッドエンド後の世界となっています。
GV は死んでるので不幸なことにはなりません。よかったね。
信頼が戦友を殺した主人公、きりん
『蒼き雷霆 ガンヴォルト鎖環(ギブス)』の主人公、『きりん』。
彼女は皇神の影の組織に所属し、第七波動を封印する能力『鎖環(ギブス)』の能力者です。
戦い続け、強まった力を抑えられなくなり暴走した GV の覚醒を封じ、彼とともに暴走する能力者を鎮圧することが彼女の役割。
彼女は世界の秩序と戦っていた GV やアキュラと比較して、重苦しい事情を抱えて戦っているわけではありません。
きりんはむしろ秩序を守る側の存在で、正しいことをしているからこそ、バッドエンドでは心に影を落とす出来事に見舞われてしまいます。
それは、 GV を殺めることです。
自分の力でも抑えられないほど強力になり暴走してしまった GV は、最後の理性を振り絞って自らきりんの刀に刺され、その命を絶ってしまいます。
それなりの時をともに戦い、お互いに心の底から信頼をおける戦友となっていたふたり。
GV は一番信頼できるきりんになら構わないと言いますが、きりんもまた GV と自分ならどんなピンチもなんとかできると信じていました。
ふたりがお互いを信頼しているからこそ起きたすれ違い。
残された彼女からしたらたまったものではありません。
トゥルーエンドでも GV と別れることになりますが、それはお互いいつになるかはわからない未来での再会を信じての別れです。
主人公たちの中でもっともマシな結末を迎えたきりんですら、気持ちのいい終わり方だとは口が裂けても言えません。
いつか GV と再会した時は、ぶん殴って文句のひとつでも言ってほしいものです。
さいごに
『蒼き雷霆 ガンヴォルト』は基本的に、敵味方を問わずすべてのキャラクターに優しくない世界です。
だからこそ、譲れない想いのために戦う主人公たちの信念や悩みは共感や同情を生み、ストーリーとともにプレイヤーたちの間で語り草となっています。
インティ・クリエイツの真の性癖はもしかしたら、そんな主人公たちに同情や悲しみの感情を抱いていたたまれなくなるわたしたちプレイヤーを見ることなのかもしれません。
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