アニメ・ゲームから学ぶ特別養子縁組制度(第1回)衛宮士郎は本当に衛宮切嗣の養子なのか【FGO・Fate Stay night】

この記事では、日本における特別養子縁組制度を、アニメやゲームと関連させて、わかりやすく説明しております。

養子縁組に興味がある方に、軽い気持ちでお読みいただければと思っています。

元殺し屋のおじさんでも孤児を養子にすることができるのだろうか・・・

みなさんこんにちは、「横島先生」です。

本日から数回に渡り、日本における特別養子縁組制度について、ざっくばらんに語っていきたいと思います。

中学生くらいの方でも理解できるように、かみ砕いてご説明していく予定です。

記念すべき第1回目は、Fate/stay nightの主人公であり、FGOに擬似サーヴァントとして登場している「衛宮士郎」に焦点を当ててお話をしていきます。

(Fate/stay nightやFGOを知らない方でも、理解できるような構成になっております。)

Fateシリーズは世界中にファンを持ち、その魅力的なストーリーには定評があります。

ストーリーで直接描かれていない部分についても想像が膨らまされることも多く、

・「衛宮士郎」の実の両親は誰なのか

というのもファンの間では一度は話題となる内容だと思われます。

一方、育ての親である「衛宮切嗣」との養子関係については、疑う方はほとんどいないと思います。

しかし、養子縁組制度の仕組みを知っている方であれば、

・衛宮士郎は本当に衛宮切嗣の養子なのか

という(比較的どうでもよい)疑問を感じるはずです。

この記事では、その疑問を通して、「養子とはなんであるのか」を皆さんと一緒に確認していければと思っています。

ではさっそく、詳細を見ていきましょう。

  1. 日本の法制度においては、家庭裁判所が衛宮切嗣に養子の許可を出すとは考え難い
  2. 養子に関する3つの制度のいずれも適用できない
  3. 衛宮切嗣は、日本の法制度にとらわれない「なんらかの方法」で士郎を養子に迎えたと思われる

この記事は5分程度で読み終わりますので、さいごまでお付き合いいただければ幸いです。

「幼き日の士郎少年」と「衛宮切嗣」の状況

士郎少年は災害孤児

士郎少年は、「7歳」前後の頃に「冬木大火災」という災害で両親を失い、孤児となりました。

ここでのキーポイントは、

・災害当時、15歳未満であった

・両親が死去している

・大火災の唯一の生き残りであった

という点になります。

衛宮切嗣は妻に先立たれた元殺し屋

一方、衛宮切嗣の状況も複雑です。

・引退しているものの元殺し屋

・妻には先立たれている

・子供は妻の実家に引き取られ、逢うことが許されない

・聖杯の影響により体調もすぐれない

聖杯戦争で世界を救った英雄ではあるものの、生活力はあまり感じない、というのが正直な印象です。

日本における養子縁組制度

大別すると3つ存在する

「自分が生んでいない子供」を育てる制度として、日本では、

・里親制度

・普通養子縁組制度

・特別養子縁組制度

の3つが存在します。

衛宮切嗣が、孤児である士郎少年を養子に迎えるにあたり、どの制度を利用したのかを考察していきます。

里親制度

里親制度は、「子供を育てる権利・義務」である親権は『生みの親』に残しながら、『育ての親』が子供を育てる制度です。

『生みの親』から『育ての親』に子供の育成を委任するような形になっているため、基本的には『育ての親』に対して国からの補助金が支給されます。

また、親権は『生みの親』に帰属するため、子供はいつかは『生みの親』の元に戻ることとなります。

そして、里親制度では子供の苗字は『生みの親』の苗字となります。

士郎が「衛宮」姓(育ての親の姓)を名乗っていることから、衛宮士郎と衛宮切嗣の関係は里親制度ではなさそうです。

普通養子縁組制度

普通養子縁組制度では、「子供を育てる権利・義務」である親権は『育ての親』が持つこととなります。

一方、子供の財産相続に関する権利などの親子関係は『生みの親』と『育ての親』の両方に紐づいており、どちらの親が亡くなっても子供に相続権が発生します。

また、普通養子縁組制度では、子供の苗字は『育ての親』の苗字となることが一般的です。

こうなってくると、衛宮士郎と衛宮切嗣は「普通養子縁組制度」を結んでいる可能性が出てきます。

しかし、養子となる子供が「未成年」である場合、養子縁組には家庭裁判所の許可が必要となります。

家庭裁判所では、子供が成人するまで、『育ての親』がきっちり養育できるかを確認します。

そして、衛宮切嗣の場合は、

・子供が15歳未満の場合、福祉の都合上、独身者は育ての親として妥当ではないと判断される

・元殺し屋の経歴が子供に悪影響を与えかねない

・健康状態も悪く、子供が成人するまで育成できない

・子供を養育するための経済的な基盤がない(証明できない)

といった理由により、家庭裁判所が養子の許可を出すことはほとんどあり得ないと思われます。

それでも、「冬木大火災」という災害により孤児が溢れかえっている状態であれば、孤児たちの引き取り手が足りず、擁護施設も満員になってしまい、家庭裁判所も衛宮切嗣への養子の委託を許可することもあったかもしれません。

しかし、衛宮士郎は冬木大火災の唯一の生き残りという設定であるため、その可能性もないということになります。

日本には、子供を育てたいけれども自分たちでは子供を授かることができなかった夫婦がそれなりにいます。

そのため、家庭裁判所としても、衛宮切嗣よりは他の夫婦に許可を出す方が妥当であると考えるはずです。

特別養子縁組制度

特別養子縁組制度においても、「子供を育てる権利・義務」である親権は『育ての親』が持つこととなります。

また、親子関係についても『生みの親』と『子供』の間では消滅することになり、生みの親が亡くなっても子供に相続権は発生しません。

つまり、法律上は『育ての親』と『子供』の間に、普通(という表現もおかしいですが)の親子関係が成立することになります。

当然、苗字も『育ての親』と同じものとなります。

子供に関する権利や義務のすべてを『生みの親』から『育ての親』に移譲する制度であるため、家庭裁判所による審査も普通養子縁組に比べて厳しくなります。

例えば、

・子供の年齢は15歳未満

・『生みの親』が子供を手放すのに十分な理由が必要(虐待・経済的に極めて困窮など)

・『育ての親』が子供が成人するまで育成できること(健康面・経済面・年齢面)

・『生みの親』よりも『育ての親』が育てることが子供の利益になること

・『育ての親』と『子供』が実際に半年以上生活した状況を鑑み、家庭裁判所が養子関係が適切であると判断すること

といったことが求められるため、家庭裁判所が衛宮切嗣に対して特別養子縁組の許可を出すことは少々考えづらいです。

結論とまとめ

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

本日は、「衛宮士郎は本当に衛宮切嗣の養子だったのか?」という疑問に対して、ざっくばらんに語らせていただきました。

結論としては、

・家庭裁判所が衛宮切嗣に養子の許可を出すとは考えづらい

ということになります。

切嗣が士郎を養子とした時点では、アインツベルン家という強力な後ろ盾を失っており、超法規的措置が講じられたとも考えにくいです。

そのため、

・冬木大火災の混乱に乗じてなんとかした

・魔術的な何かをつかってなんとかした

といったことが考えられますが、詳しい方がいらっしゃいましたらお教えいただければ幸いです。

次回は、不朽の名作ゲームである『ひぐらしのなく頃に』に絡めまして、特別養子縁組という制度の意義についてお話ししたいと思っております。

では、本日はここまでとさせていただきます。

ではでは。

ライター紹介

横島先生
こんにちわ、『横島先生』と申します。
工学の博士号を持つ異色のゲームライターです。
ネットゲーム歴は長く、「Diabro2」や「Age of Empire2」などの海外ゲームから入り、国産ゲームでは「FF11」を長くプレイしておりました。
現在はmihoyo社の「原神」に出会い、熱中しております。
皆様に有意義な情報をお伝えしたいと考えておりますので、何卒、よろしくお願いします。
twitterアカウント:https://twitter.com/yokoshimasensei