ラジオドラマからゲームに!?「火星物語」をレビュー!

知名度は低いが、魅力はたっぷり「火星物語」ってそんなゲーム。

1998年、とある不思議なゲームが発売された。

それが今回ご紹介する「火星物語」!

おそらく、ゲームの名前を聞いたことがある人の方が少ないのでは?と思うほど知名度が低いゲームです。

しかし、知名度の低さはゲームのクオリティとは比例しません。

  • 原作を活かした、展開がスムーズなラジオドラマ風RPG
  • 粗めのポリゴン描写と超豪華声優陣のアルティメット・ミスマッチ
  • 広井王子の天才的シナリオにより「めちゃめちゃ笑ってめちゃめちゃ泣けるゲーム」に

90年代の殺伐とした、ある種閉塞的とも言える、オタク要素たっぷりな良ゲーです。
この記事は5分で読み終わりますので、最後まで読んでいって下さいね!

「火星物語」なだけに、火星が舞台。

12歳になるまで名前と職業が与えられない、そんな火星の一区域に住む主人公。

主人公は12歳になり、名前と職を手に入れようと「カンガリアン」という街に向かいます。

そこで主人公が出会ったのは、今まで自分が知らなかったような文化・常識・慣習。

自分はどこから来て、どこへ行くのか。なんのために生きているのか。

己のアイデンティティを探しに、自由を求めに、名前と職を手に入れた主人公の冒険が始まります。

こんなドラマチックなストーリーは、ラジオドラマ原作だからこそ。

もともとはラジオドラマ「火星物語」をリエディットした本ゲーム。

そのラジオドラマ自体が、ファミ通読者からの読者投稿ハガキによって作られたものなので、非常にバラエティ豊かです。

収録時にかなり声優陣のアドリブが入り、かなりカオスになっていたので、ゲームにするのは難しかったと思いますが・・・

巧くラジオらしさをゲームに落とし込んでいて、原作ファンも納得の内容に仕上がっていると思います。

色物ゲーと侮るなかれ、ゲームの完成度はハイレベル

火星物語の面白いところは、同じ世代の他のRPGと比べてかなり斬新な構成になっているところです。

90年代にはFFやドラクエという黄金プラットフォームがあったため、それに乗っかる「またおまRPG」系作品もよく見受けられました。

こういうゲームの場合、キャラの個性一辺倒な作りになったり、ネタストーリーに走りすぎたりしますが・・・

火星物語はいい塩梅で「キャラゲー」と「本格RPG」と「アクション」の融和に成功しています。

ほぼ一直線のストーリー

火星物語は、ゲーム全体が30のチャプターに分かれたつくりになっています。

チャプター内では次に行くところはほぼ100%決められているので、それに従ってゲームを進めていきます。

自由度が無いと言えばそれまでかもしれませんが、その自由度の無さを私は「箱庭感」「絵本の中の様」と評価します。

それにより、余計なことは考えずにストーリーにどんどん没入できる。

このような不思議な感覚にしてくれるのは、昨今の流行とは真逆の「クローズワールドゲーム」ならではだと思います。

バトルはかなり工夫されている

ゲーム全体はかなり一本化されたストーリーなのに対し、バトルはしっかりと考えて行うコマンド型バトル。

通称「アドリブバトル」なんて言い方も公式でしていました。

なげる」という特殊コマンドがあり、フィールド上にある物は、ほぼ全て選択して投げる事ができます。

石を味方に投げたり、味方を敵に投げたり、味方を石に投げたり、、、可能性は無限大です。

投げた物やキャラの組み合わせによって、非常に多彩なアクションが発生するので、ひたすらいろんな物を投げまくってアクションエフェクトを見る遊びも楽しいですよ!(敵討伐は二の次)

幕間に感じるスタッフのクリエイティビティ

チャプターが終わるとそこでセーブが行われ、次のチャプターに進んでいきます。

そのチャプターとチャプターの間に「幕間」なるキャラクターの人形劇の様なものが挟まれます。

幕間では、そのチャプターで活躍したキャラが、楽屋裏的な雰囲気でゆるーいトークで楽しませてくれちゃったりなんかして。

言うならば「宝塚のカーテンコール」「ピクサー映画のエンディングNGシーン」のような・・・

本編とは全く関係ない数分感が、ゲームそのものの雰囲気を「現実味のあるもの」に押し上げている。

壇上のキャラと客席わたしたちの目線の高さが等しくなった時。これはもうゲームとゲーマーがひとつになっていると言っても過言ではありません。

間違いなくコレ、制作陣、狙ってますね。

豪華すぎるキャスト&スタッフ

キャラクターの個性の豊かさ、計算されたストーリーテーリング、原作への愛が詰まったゲーム性などなど・・・

火星物語ってほんとに90年代を代表する名作だということはわかっていただけたかと思います。

そして、これからはこのゲームの最大の特徴を申し上げていこうと思っております。

え?これ本当にPSのソフト?ってくらいの声優陣

そうです、火星物語の最大の特徴は「恐ろしいくらいの豪華声優陣」です。

もうもはやゲームじゃなくてアニメ作った方がいいくらいです。

まあ、もともとが声優さんが出演されているラジオドラマなので当然っちゃあ当然なのですが・・・

横山智佐さん、千葉繁さん、宮村優子さん、豊口めぐみさん、三石琴乃さん、田中真弓さん、子安武人さん、関智一さん、宮村優子さんなどなど・・・(これでもかなり抜粋しています)

どの方も一度は名前を聞いた事がある、というかメイン級のキャラをバンバンこなしてきた、もとい、今現在もこなしているベテラン実力派声優さん達が出演されています。

90年代後半、まだまだボイス入りのゲームがあまり存在していない頃にこのチート級のメンバーを揃えてゲームを作るあたりが恐ろしいです。

そもそも脚本家がエグいです

脚本は広井王子さん!

知らない方のために氏をご説明しますと、ゲーム業界では火星物語の脚本のみならず、サクラ大戦魔神英雄伝ワタル天外魔境シリーズなどなどをプロデュースされた方です。

他にもAKB48の舞台なども手掛ける、日本が誇るハイパーマルチクリエイターです。

そんな広井王子さんのラジオから生まれた火星物語。

個性的なギミックや、今までなかったものをゲームに組み込んでいく斬新さ・新鮮さは、氏の手腕によるものが大きいでしょう。

メディアミックス作品として大成功!

まあ、同世代に「スレイヤーズ」というレベチなメディアミックスバカ売れおばけがいるので、ちょっとその偉業は薄まりがちですが・・・

それでもあのメディアミックス全盛期な90年代後半にラジオから始まりラジオCD化、小説化、ゲーム化、マンガ化、とかなりサクセスフルな結果を残しているのは非常に驚きです。

時代も時代だったので、おもちゃ化、トレカ化、プラモ化されなかったのが残念ですが・・・

知人が当時のワンフェスにクエスたんのガレキを展示したら、黒山の人だかりだったとかなんとか。

(ちなみにその頃のワンフェスのマスコットキャラは、なんと、火星物語のキャラデザを担当している水玉螢之丞さんです。)

さいごに

「絵本の様に優しいRPG」と表されるこの火星物語!

ポリゴンカクカクで無機質なグラフィックが、吹き出しと共に豪華声優の「声」もとい「命」を吹き込まれて生き生きと動くその姿。

リアルを追求する当時のゲームの流れからすると、かなり真逆のセンを行くそのつくりが、制作グループの「作品への愛・優しさ」を、プレイヤーにより感じ取らせることに成功したのでしょう。

広井王子原作のキレキレのストーリーと、昨今のアニメ・ゲーム業界において不可欠な超豪華声優陣による命の吹き込みが行われた「火星物語」。

もう1回プレイしたくなってきちゃいましたよね?

やってない人はプレイしたくなってきちゃいましたか?

しかし、このゲーム唯一の欠点、それは・・・

「マイナーゲーすぎてPSアーカイブスに入ってない」

・・・

みなさん、実機買ってやりましょうね\(^o^)/