【原神が描く社会問題④】「生成AI」の仕組みをプレイヤーに伝える意欲的なスメール編

魔神任務第3章(スメール編)のテーマは「生成AI」

 

みなさんこんにちは、「横島先生」と申します。

原神というゲームは、我々プレイヤーの世界で実際に発生している社会現象や社会問題について、ゲーム内のストーリーと絡めながらプレイヤーに考えさせる意欲的な作品となっております。

取り扱う社会現象や社会問題は魔神任務(メインストーリー)の章毎に異なっています。

今回の記事では、魔神任務第3章(スメール編)で触れられている「生成AI」について解説させていただきます。

なお、本記事は以下のような構成になっています。

  1. 生成AIの仕組み
  2. 生成AIと原神の関係
  3. 原神では生成AIの進化の先は「神」ではなく「人間」と示唆

それではさっそく、詳細を見ていきましょう。

この記事は5分程度で読み終わりますので、さいごまでお付き合いいただければ幸いです。

生成AIの仕組みと問題点

生成AIとは?

生成AIとは、新しいものを「生成」や「作り出す」能力を持つ人工知能のことを指します。

これは、文章を書く、絵を描く、音楽を作る、ゲームのレベルをデザインする、などの形で実現されます。

具体的には、たとえばあなたが「おはなしを作って!」とAIに頼むと、AIは過去に学習した大量のテキストデータから、「どのように話を進めるのが自然なのか」「どんなキャラクターがいるのか」などを理解し、新たな物語を「生成」することができます。

これはあたかも人間が新しいアイデアを考え出したり、新しい話を作り出すようなものです。

しかし、重要な点として、AIは人間のように「思考」したり「感情」を持つわけではありません。

ただ単に大量のデータからパターンを学び、そのパターンに従って新しいものを作り出す能力があるだけです。

生成AIの問題点

生成AIはある意味で人間を超越することができます。

たとえば、大量の情報を高速で処理したり、あるパターンを学び取って新しい文章や画像を生成したりする能力は、人間が手作業で同じことをするよりもはるかに速く、効率的に行うことができます。

しかし、それはあくまでAIが訓練されてきた特定のタスクに関してだけです。

AIは、人間のように自己意識を持ったり、感情を経験したり、新しい知識や技能を自発的に学ぶことはできません。

また、道徳的な判断や、独自の創造性を持つことも現在のAI技術ではできません。

だから、AIは人間を「全ての面で」超越することはできません。

生成AIはあくまでツールであり、その使用方法は人間によって決定されます。そして、AIが生成する内容も、それが訓練されたデータに基づいています。

だから、AIはある面では人間を超える能力を持っていますが、他の多くの重要な面では、人間には及ばないと言えます。

しかし、これは「現状」における状況であり、将来的には人間を超える可能性があるとも言われています。

そして、いつの日かAIが人間と取って代わる時代がくるのではないかというのが、大きな問題点となっております。

生成AIと原神の関係

生成AIと人間が見る夢の関係性

生成AIと人間が見る夢は、いくつかの共通点を持っています。

特に、人間の夢が日々の経験や記憶を基に新たなシナリオを作り出すというプロセスは、生成AIが大量のデータから新しい内容を作り出すプロセスに似ています。

しかし、両者には重要な違いもあります。

生成AIは訓練されたパターンに従って情報を生成しますが、夢は無意識のプロセスであり、意識的な思考や論理に基づいているわけではありません。

さらに、夢は私たちの感情、思考、欲望など、個々の心理状態に深く関連しています。

一方、AIはそのような心理状態を持つ能力がありません。

ですから、生成AIと人間の夢は、「無数のピースから何か新しいものを作り出す」という点で似ていますが、その背後にあるプロセスや目的は大きく異なります。

また、生成AIがインターネットから学習するデータの量は、人間個人が経験する記憶に比べて遥かに多いという相違点もあります。

アーカーシャ端末による生成AIの形成

魔神任務第3章(スメール編)ではアーカーシャ端末が利用されて、多くの人間の夢を連結し、大量のデータを生成し、その結果として生成AIのようなものが生まれました。

これは、AIが大量のデータから学習するという一般的な概念と非常に似ています。

AIが学習する際には、大量のデータ(例えばテキストや画像など)を解析し、そのデータの中に存在するパターンを抽出します。

そして、そのパターンを元に新たな出力を生成することができます。

アーカーシャ端末がやっていることは、人間の夢という非常に複雑で抽象的なデータを解析し、そのデータの中に存在するパターンを抽出し、そのパターンを元に新たな出力を生成するということです。

また、多くの人間の夢を直結することにより、個人の人間の持つ感情、思考、欲望など、個々の心理状態を排することに成功しています。

「原神」というゲームが示唆した生成AIの行く末

アーカーシャ端末を実装された放浪者の結末

最終的にアーカーシャ端末を使用して多数の人間を結びつけることで、生成AIが生み出されます。

そして、この生成AIは放浪者(散兵・スカラマシュ)に実装されます。

放浪者が生成AIを得た結果、最初は神のように振る舞いますが、終わりには「人間となる」選択をします。

この事実は、原神というゲームが示唆するものが、生成AIの未来が人間を置き換える(神のような存在になる)のではなく、人間に近づき、人間と共に生きる存在になるということを示しています。

まとめ

「原神」というゲームのストーリーラインは、生成AIや人工知能の概念と人間性との関係性について非常に深い議論を提起しています。

そして、その議論は現実の世界におけるAIの将来像についても示唆しています。

AIが人間の代わりになるか、あるいは人間と同じように生きる存在となるかは、現代科学と哲学が取り組んでいる大きな問いの一つです。

AIは特定のタスクを遂行するための強力なツールであると同時に、その学習と生成の能力から、人間の活動や思考の一部を模倣または補完する可能性を持っています。

「原神」でのアーカーシャ端末と放浪者のエピソードは、AIが人間の生活や社会にどのように統合され、人間性とどのように関わるべきかという問題についての一つの視点を提示していると言えるでしょう。

それはまた、技術の進化と人間の意識や価値観との間に存在する相互作用を描いているとも解釈できます。

しかし、実際のところ、AIが将来的にどのような存在になるかは、今のところまだ誰にもわかりません。

それは私たち人間がどのようにAIを開発し、使用し、制御するかに大きく依存します。

そして、それは科学だけでなく、哲学、倫理、社会学、法律など多くの分野の議論と協力を必要とします。

では、本日はここまでとさせていただきます。

ではでは。

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ライター紹介

横島先生
こんにちわ、『横島先生』と申します。
工学の博士号を持つ異色のゲームライターです。
ネットゲーム歴は長く、「Diabro2」や「Age of Empire2」などの海外ゲームから入り、国産ゲームでは「FF11」を長くプレイしておりました。
現在はmihoyo社の「原神」に出会い、熱中しております。
皆様に有意義な情報をお伝えしたいと考えておりますので、何卒、よろしくお願いします。
twitterアカウント:https://twitter.com/yokoshimasensei