眠れぬ夜のお供に…
推理アドベンチャーゲームには他ジャンルの推理物にはない、面白さが詰まっています。
アドベンチャーゲームの歴史は古く、 RPG よりも先につくられています。
謎を次々に解いていくのがアドベンチャーゲームですが、最近はコマンドもなく、小説や映画のように話を追っていって、その内容を楽しむもの、簡単な操作で物語が分岐するものなど、多岐にわたってきました。
そんな中でも推理アドベンチャーゲームは、アドベンチャーゲームの花形といえます。
見ようと思えば犯人が分かってしまう小説などと違い、推理アドベンチャーゲームは、推理を重ねてゲームを進めていかねば、最後がわかりません。
もっとも、推理物のお話に適した娯楽形態といえるでしょう。
謎を解いていくのがアドベンチャーゲームのキモだとすれば、推理物こそがそれにふさわしいのは言うまでもないのです。
「探偵 神宮寺三郎」シリーズは、そんな中でも、古参に位置し、今なお根強い人気を誇っている、オススメできるゲームです。
今回はそのシリーズの中でも手に取りやすく、遊びやすい『探偵 神宮寺三郎 プリズムオブアイズ』を取り上げてレビューいたします。
初めての人にもわかるように構成したので、興味を持っていただければと思います。
- 探偵 神宮寺三郎とは?
- プリズムオブアイズの位置づけ
- ゲームとしての良さ!
- ストーリーの良さ!
この記事は4分で読めますので、よろしければ最後までご覧ください。
探偵 神宮寺三郎とは?
始まりは1987年。
データイーストから、ファミリーコンピュータのディスクシステム用のソフトとして、『探偵 神宮寺三郎 新宿中央公園殺人事件』は発売されました。
それまでのファミリー向け、子供向けとは違う、大人向け、渋めのハードボイルドな路線。
心打つ、魅力的なストーリー。
新宿の街を中心に、名探偵が鮮やかに事件を解き明かす。
それが、「探偵 神宮寺三郎」なのです。
血液型はAB型、身長179cm、体重70㎏。
好きなタバコは吸いごたえのあるレギュラータイプ、好きな酒はブランデー、好きなコーヒーはカプチーノ、愛車はコンパクトカーを乗り回す。
父は神宮寺晴彦、国際企業神宮寺コンツェルンの総帥、上の二人の兄もそうそうたるものなのですが、そんな境遇に反発し、違う道、探偵をすることになりました。
今は助手の御苑洋子とともに新宿歌舞伎町に探偵事務所を構え、経営しています。
筋金入りのヘビースモーカーで、マルボロをくゆらせながら、推理していくのが、お決まりのスタイルです。
プリズムオブアイズの位置づけ
結果として、多くの人の支持を集め、次のが発売され、売れて、また次のがと続き、「探偵 神宮寺三郎」はシリーズ化していきました。
版権が他の会社へと移っていき、下火となった時期もあります。
そんな中、2016年にアークシステムワークスがエクスプライズよりその無体財産権(基本的に知的財産権に同じ。情報に財産的価値を認め、権利として定める)を取得します。
アークシステムワークスは、「探偵 神宮寺三郎」の復活を宣言します。
そして、満を持して、『探偵 神宮寺三郎 プリズムオブアイズ』が2018年8月9日に発売されました。
作品的な位置づけとしては、第18作目に当たります。
携帯アプリで展開していた、「時の過ぎゆくままに…」、「6枚の犯行」、「亡煙を探せ!」、「アオイメノリュウ」、「イヌと呼ばれた男」、「ふた色の少女」、「託された指輪」、「椿のゆくえ」、「果断の一手」、「連鎖する呪い」をまとめて収録。
神宮寺三郎、御苑洋子、熊野参造ら主要メンバー3人がそれぞれ主人公の長めのメインストーリー、お茶らけたギャグテイストのボーナスストーリーをくわえ、全部で14の、ボリュームのある一作としました。
現在、 playstation 4版と、 Switch 版が発売されています。
ゲームとしての良さ!
はじめに言っておきましょう。
はっきり言って、地味なアドベンチャーゲームです。
いぶし銀のミステリー好きのためのゲームという感じですが、ミステリーは現代において、大きく間口を広げることのできたエンタメのジャンルです。
それだけ世間に膾炙した娯楽の形態といえないでしょうか。
ミステリーには謎がつきものです。
ゲームも問題(試練、謎)を次々に解いていくのが基本的な構造です。
そこを大きくクローズアップし、小説と違い、絵がついたり、音楽が流れていたりして、入り込みやすい環境を整えてもくれ、楽しみとして洗練させたのが推理アドベンチャーゲームだとすれば、人類の発明した、最大級の知的快楽を得る手段のひとつといえます。
もちろん、質、内容も問題になってきます。
その点は、ゲームとしての良さと、ストーリーの良さからこのゲームがそれにふさわしいといえると思います。
『探偵 神宮寺三郎 プリズムオブアイズ』は、 Look 見る、 Search 探す、 Item 持ち物、 Move 移動、 Memo メモ記録、 Smoke タバコを吸うなどの簡単なコマンドを使います。
推理力を働かせれば、スピーディに話が進んでいく、オーソドックスなアドベンチャーゲームの形をとっています。
操作性にストレスはありません。
動きはスムーズです。
重要なコマンドは一発で発動できるようキーやボタンが割り振られています。
ゲーム性のキモ、推理していくこと
このゲームのゲーム性は「推理していくこと」だと思います。
総当たり的にコマンドを試していっても先には進めるでしょうが、それでは考えて話を進めていく楽しみは激減してしまいます。
メモには必要最低限の情報しか記録されません。
何から何まで記録されていると、その情報を見ながら話を進めていけば良くなってしまいます。
ただストーリーをなぞっていくだけになってしまいます。
記憶を確認する
そのため、ストーリーの所々で、プレイヤーの記憶を問う場面が設けられています。
自分で独自にメモを取っておくもいいのかもしれません。
それほど覚えることは多くないので、しっかりストーリーに向き合っていれば一発で解けるはずです。
ペナルティは特にないのですが、一体感が得られて気持ちがいいはずです。
もちろん、推理を問われる場面も用意されています。
前後関係を洗ったり、ちょいと頭をひねれば閃くはずです。
どうぞ、推理アドベンチャーゲームの一番面白い部分を、楽しんでください。
タバコを吸う
それに、推理が苦手な方のために、お助けシステムが搭載されています。
それが Smoke 、タバコを吸う、です。
神宮寺三郎の嗜好をゲームに落とし込んで、タバコを吸えば彼が話を進めるための、推理の一助となるヒントをくれる、というものです。
万能ではなく、濁してくる場合もあるのですが、それでも活用していけば易しすぎず、難しすぎず、スパイスとなってゲームをさらに面白くしてくれるはずです。
ストーリーの良さ!
ストーリーの良さを語りましょう。
一つの話をクリアするのにかかる時間は1時間から1時間30分ほどでしょうか。
程よい長さの中に、ミステリーの面白い要素、謎解き、謎、軽妙な会話劇が詰め込まれ、一本の良質のドラマを見た満足感が得られます。
リメイクでの所感ですが、メインストーリーのほうでもクリア時間は伸びると思いますが、同様のものが得られるでしょう。
死ぬほど笑えるとか、泣くほど感動するという体験はありませんが、ひねりもあってしっかりまとまっており、最後までやり通すとなんだかじんわりして、やり遂げた爽快感がやって来ます。
長年支持されてきただけはあり、安定した安心さがあります。
いまどきこのようなハードボイルドな探偵ものは珍しく、ここでしか味わえない、なんともいえない大人な世界が待っています。
もちろん、プレイする人は大人でなくともよいのです。
CERO は C 、15歳以上の方、それぐらいの年頃ならば、このゲームはすんなり受け入れてくれます。
どうです?
フィクションではありますが、現実に潜む、もうひとつの裏の世界をのぞいてみませんか?
さいごに
ゲーム中入手できるパスワードを入力することで、より詳細な人物紹介、ギャラリー等をアンロックできます。
やりこみ要素、お楽しみもしっかり用意されている意欲作が今作です。
参考までに、御苑洋子と熊野参造のかんたんなプロフィールを載せておきます。
それと、華がない!と思う方もいらっしゃるかもしれません。
謎の美女を載せておきましょう。
御苑洋子
熊野参造
謎の美女
急がなくともよいのです。
ゆっくり、じっくり探偵ストーリーに浸かってみませんか?
ライター紹介
- 本とゲームが大好きです!
ゲームはアナログ、TRPG、ボードゲームも好物。デジタルは特にアドベンチャーとRPG。
他にもイラスト、音楽、映画、アニメ、マンガと、言ってしまえばカルチャーに浸かっているようなものです。どれもこれもがいいんです。
無類の珈琲党。